産婦人科医と助産師の役割

こちらでは、普段はなかなかわかりづらい「産婦人科医」と「助産師」についてわかりやすくお話しします。 ・どういうときに関わるの? ・〇〇を相談するときにどっちが専門的なんだろう? ・普段の健診で会うのは看護師さん?助産師さん? などがすっきりし、身近に感じていただければ嬉しいです。

産婦人科医とは

 産婦人科医は、医師の中でも、「妊娠・出産」、「婦人科疾患(子宮筋腫や卵巣癌など)」「内視鏡手術」、「不妊治療」、「女性のヘルスケア(更年期障害など)」などを扱う専門家です。妊婦健診や出産、帝王切開で関わる医師はみんな産婦人科医ですが、「妊娠・出産」のことだけでなく、その他の婦人科手術や癌、更年期障害などについても専門的な知識を持っているということになります。  「妊娠・出産」に関わる仕事だけでも、「妊婦健診(外来)」、「羊水検査など特殊検査」、「普通分娩」、「帝王切開」、「産後健診」、「入院患者さん(切迫早産など)の管理」など、たくさんの業務があります。これらを1日にこなしていますので、いつも忙しそうに見えてしまうかもしれませんね。

助産師とは

 助産師は、妊産婦と新生児に関して幅広く、妊娠中から産後までケアを提供できる専門職です。助産師になるには、看護師免許を取得してからさらに1~2年間、助産師教育機関で学ぶ必要があります。このため、助産師として働いている方々は、強い思いと優しい気持ちを持って妊産婦さんと赤ちゃんに接しています。  妊婦健診として外来での対応もしていることが多く、「看護師さんかな?」と思っていたスタッフが実は助産師であることもよくあります。陣痛が来て入院するとき、看護師さんも産科病棟で勤務していることも多いのですが、いざ出産!という場面でお産の介助をしてくれるのは、助産師さんに限られます。

妊婦健診から出産までの関わり方

 普段健康な女性は、妊娠するまで産婦人科を受診したことが一度もない、という方も少なくないでしょう。妊娠が判明したら、初めて産婦人科を受診して、言われるがままに妊婦健診が進んでいく。そんな中では、「産婦人科の先生や助産師さんってどんな人?」ということに思いを巡らす暇さえないかもしれませんね。ここからは、妊娠・出産に関して、産婦人科医や助産師がどのように妊婦さんたちをみているのか、詳しく書いていきます。 (1)妊娠初期(~妊娠14週頃まで)  多くの方は「妊娠したかも?」と思ったとき、まずは市販の妊娠検査薬を購入し、自宅でチェックしてみるでしょう。そこで陽性、つまり妊娠しているという結果が出たとき、初めて産婦人科の受診を意識します。特に、これまでに「生理痛」や「不妊治療」、「子宮がん検診」などで産婦人科を受診した経験のない方にとっては、緊張や不安も大きいことと思います。  病院を受診すると、問診票の記入を指示され、診察室に通されます。場合によっては、先に尿検査をして妊娠反応が陽性かどうかを確認することもあります。診察室では産婦人科医の問診と診察があり、ここで「現在の健康状態」、「過去の病歴」、「家族歴」などを確認されます。続けて、内診台での診察が行われます。経験のない方にとっては「痛そうで怖いな」というイメージがあるかもしれませんが、そういう方には特に注意して、慎重に診察してくれますからご安心ください。  エコーを行なって、子宮内に赤ちゃんの心拍が見えたら妊娠の確定診断ということになります。通常、この段階で母子手帳を役所からもらってきてくださいねと病院から言われますので、次回の診察までに忘れずに取りに行きましょう。母子手帳の受け取り方や今後の健診の流れを説明してくれるのは助産師さんになります(看護師が担当している場合もあります)。  妊娠初期に起きうるトラブルや症状には、子宮外妊娠(異所性妊娠)の可能性、出血や下腹部痛(切迫流産)、つわりなどが代表的です。また、エコー検査で胎児の異常が見つかることや、採血検査で甲状腺機能異常、貧血、感染症(風疹、肝炎ウイルス、エイズなど)の異常を指摘される可能性があります。これらに関しては、医学的知識を持つ産婦人科医に質問や相談することで、最も信頼できる情報を得られるでしょう。  一方で、食事の選び方や体重のコントロール、精神的な不安や仕事の両立などに関しては、ゆっくりと時間をかけて話すことのできる助産師さんに相談する方が、満足のいく回答をもらえるかもしれません。 (2)妊娠中期(妊娠15週~妊娠27週頃まで)  妊娠初期では通常4週間に1回程度のペースで健診が行われますが、妊娠24週を迎える頃になると、2週間に1回のペースに間隔が狭まります。毎回の健診で、産婦人科医は必ず診察室であなたの現在の状況や体調を確認してくれます。必要時には、内診や追加のエコー検査を行ってくれます。定期的な採血検査もあるので、結果をしっかりと先生に聞いておきましょう。  医療機関によっては、お腹のエコー検査(赤ちゃんの体重測定や羊水のチェックなど)を専門の超音波技師が担当する場合もありますが、総合的な結果は医師からの説明がきちんとありますのでご安心くださいね。  妊娠中期に起きうるトラブルや症状には、出血や下腹部痛(切迫流/早産)、頸管無力症、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、羊水の異常(過多、過少)、赤ちゃんの体重異常(子宮内胎児発育不全など)、胎盤の位置異常(前置胎盤や低置胎盤)などが挙げられます。また、子宮筋腫や甲状腺疾患、精神疾患などを持って妊娠した場合には、中期以降にもしっかりしたケアが必要になってきます。このようなことに関しては、やはり専門的な知識を持っている産婦人科医への相談が一番いいでしょう。  一方で、体重のコントロール、精神的な不調やストレス、腰痛、骨盤ベルトの使用、エクササイズ・マタニティスイミング・マタニティヨガ、会陰マッサージなどについては、助産師さんの方が、より細かなアドバイスをできることが期待できます。 (3)妊娠後期(妊娠28週~出産まで)  妊娠後期に入ると、だいぶお腹も大きくなってきます。ちょうど妊娠30週前後は、エコー検査で赤ちゃんの構造的な異常がないかをチェックするのに最適な時期と言われています。このため、多くの病院では妊娠28-32週あたりで、赤ちゃんの詳細なチェックを行うようにしています。これも、産婦人科医が行う場合もあれば、超音波技師が行う場合もあります。  エコーでは、逆子かどうかも判別できますので、逆子だと言われてしまった方は不安が大きいかもしれません。最近では、妊娠35週頃まで自然に治ることを期待して待つという方針の医療機関が増えてきました。ただ、逆子が最後まで治らない場合には、一般的に帝王切開が望ましいと考えられています。このように、分娩方法について(無痛分娩も含む)も、疑問点や質問があればやはり医師へ確認する方がいいでしょう。  一方で、体重のコントロール、精神的な不調やストレス、腰痛、骨盤ベルトの使用、会陰マッサージ、乳頭マッサージ、フリースタイル分娩、お産へ向けた準備や陣痛が来た時の注意点などについては、助産師さんにしっかりと話を聞いておくといいでしょう。 (4)産後(出産後~産後1ヶ月まで)  晴れて出産が無事に終わると、ここからは赤ちゃんとの生活が始まります。たくさんの不安と、寝不足や疲労による体調不良、そして精神的ストレスも重なる時期ですので、誰もが辛い瞬間を感じて当然と言えるでしょう。多くの医療機関では、普通分娩では産後4-5日間程度、帝王切開では産後7日間程度の入院が必要です。その間に産婦人科医からは出産直後のトラブル有無、心身の診察、退院時の注意点などについてお話があります。助産師さんからは、授乳や温浴の仕方、乳腺炎予防の工夫(乳房ケア)、赤ちゃんの観察のポイントや、産後の運動、骨盤ベルトについて多くのアドバイスをもらえます。  退院後は、1ヶ月健診のために必ず出産をした医療機関を受診をしていただきますが、最近では産後2週間時点で中間の健診を行っている医療機関も増えてきています。ところが、家にいる間は毎日のように、授乳のトラブル、乳腺炎(乳房の痛みや発熱)、精神的落ち込み、身体の不調や痛みに悩まされることが少なくありません。小さなお子様を抱えて病院に行くのもなかなか大変であるため、家の中で我慢しているお母さんたちが多くいらっしゃる状況がありますが、病院にいる産婦人科医や助産師はなかなか退院後のお母さんに対して柔軟な対応ができないというのが現状です。それでも、何かの不調や心配を抱えた時には、決して無理しすぎずに、かかりつけの医療機関に必ず連絡をして相談してみましょう。